REVIEW

[アトミックラウンジ展レヴュー]

▼「原発事故を問うアーティストたち/Chim↑Pomとイルコモンズ」 (文=楠見清)

「クロスビート」2011年8月号

5月、渋谷駅の岡本太郎の壁画《明日の神話》の右下隅に何者かが福島第一原発事故を思わせる絵を付け加えた事件に世間は騒然とした。2週間後、アーティスト集団Chim↑Pomの個展で事の真相が知らされる。ボムの一部始終を記録した映像と問題となった絵画のレプリカ(実物は証拠品として渋谷署に押収されている)からなる作品《LEVEL7 feat.『明日の神話」》。バンクシー同様の手口だが、これを3・11以後の日本でやってみせたのは彼ららしい。違法行為であるとはいえ、原爆や第五福竜丸など原子力時代の不安と葛藤を描いた太郎の作品に対する理解をもってすれぱただのいたずらでは片付けられない間題定義だとする見方もある。太郎が、そして養女の岡本敏子が存命だったら何と言うだろう、といった夢想も心をよぎるが、客観的に見て今回の一件は《明日の神話》の右下にヴォイド(空隙)かあるそして利用価値があるということを周知の事実としてくれた。今後何かあるたびに我々はそのヴォイドを思い出すだろう。作品保全を盾に警備を厳しくするだけでは太郎の遺産の真の価値は保存できない。この個展でさらに驚かされたのは、彼らが福鳥第一原発の20km圏内に侵入して制作した作品群だ。自い防護服姿で原発の見える展望台に登頂し旗を掲げる《REALTlMES》や、被災地の荒れ地のまん中で円陣を組んで互いの夢や願望を連呼しあう《気合い100連発》と題した映像作晶。現地で採取した植物や品々を、生け花作家との〕ラボで立体作品とした《被曝花ハーモニー》。彼らの命がけの悪のりは、震災後人々が口にした「いま私たちにできること」という問いに対して、いま自分たちヒしかできないことをするという最もハードコアな解答といえる。非常時においては極端なやり方でしか伝えられない勇気や真実もある。

奇しくも同時期開催された『アトミック・ラウンジ』という展覧会でも岡本太郎の《明日の神話》がフィーチャーされた。先月この欄でも紹介したイルコモンズ(小田マサノリ)が監修し、原子カや核実験関連の書物や音盤のコレクションに加えてサウンド・デモ用に自作した放射能マーク入りのドラムやポスターなどを展示したもの。音盤を例にあげるとクラフトワーク「放射能」やRCサクセション「Covers」は無論のこと、「ノー・ニュークス」(79年)や「狂気の核!俺達は生き残る」(81年)の横に山口百恵が放射線被曝による白血病患者を演じたTVドラマ『赤い疑惑』のサントラ盤(75年)を並べるセンスは、80年前後の日本のサブカルチャーにおける反核ムーヴメントをその前後史を含めてリアルな浮き彫りにする(ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」をもじって言うなら、実にカルチュラル・スカルプチャーだ)。美術家、文化人類学者、アクティヴィストと多様な顔をもつ小田が織りなす匿名的単独ユニットとしてのイルコモンズは、僕の印象ではどこかコーネリアス的な孤独と連帯の強い意思表示として信頼に値する。


“REPRESENTATIONAL DISCONTENT
HOT SPOTS: 3.11 Politics in Disaster Japan”
Sharon Hayashi, York University

“Fittingly, an examination of popular cultural representations of the atomic bomb and nuclear power since the 1950s was also served up in a tiny venue. “Atomic Lounge,” a pop-up library and exhibition appeared at the collectively run artists’ space Roji to hito (Alleyway and person). From industrial films to Disney features, rock magazines to manga, it focused on the sudden disappearance of critical representations of atomic energy during the 1980s.  A larger incarnation of the “Atomic Lounge” in July will include live performances and screenings of Radioactivists, a film on post 3.11 activism.”

CULTURAL ANTHROPOLOGY 2011-07-27
http://culanth.org/?q=node/414

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